どうしようもなく、旅情を掻き立ててくれる、雑誌があり、文章がある。
『トランジット』だ。
『トランジット』との出会い
僕がこの雑誌に出会ったのは、大学生の頃書店でアルバイトをしているときだった。
決して多くはないが、一定のリズムで売れていたその本を、ある日手に取ってみた。
ずっしりと重い。
開いてみてまず印象的だったのは、その紙の質。
毎月出ては捨てられる、ツルツルとした表面の月刊誌とは違い、ザラザラとしていて、1ページ1ページが写真集のような、詩集のような…、大切に作られたってことが、ページをめくる指を通して、伝わってくるような気がした。
そして、どの写真もクリア過ぎないでいて、ノルタルジックで、ストーリーがある。
文章も、「プロのライターはこんな心地よい文章がかけるのか…。」って、ちょっとした衝撃だった。
僕は旅に出る前、よくこの雑誌を読む。どうしようもなく、旅情を掻き立てられる。
まだ持っている巻数は少ないけど、いつか全巻揃えたいな、なんて思ったりしている。中古品しかなく、値段はどんどん上がってきている。急がないと…!
トランジット記念すべき第1巻目の、中国特集なんて、すでに定価より1,000円も高くなっている。
地平線と風。星空。
この雑誌にも影響されて、旅先ではたくさんの写真を撮った。
最近ではモンゴル。
まだ夏の前で、草原は茶色で「見渡す限りの草原」ではなかったけど、地平線の向こうからやってくる乾いた風と、真夜中の星空は、湿っぽいインドや東南アジアの旅とはまた少し違った印象の旅だった。
インドへ
『深夜特急』に憧れて旅だったインドは、今では少し感傷的な旅の思い出として、思い出す。
町は汚いし、客引きはしつこい。
インドの土を踏んでから1週間はカルチャーショックでストレスしか感じなかった。
でも1週間も経てば、その汚さや、人と人との距離の近さがスリリングであり、暖かくもあった。
理由もなくバラナシの町を歩いて、理由もなくガンジス川を眺めて、そんな旅は20代前半じゃないと、多分もうできないだろう。
ホアヒンは静かな海の町
バックパックを担いではじめて降り立ったタイでもたくさんの写真を撮った。
10月の日本からバンコクに来た僕は、タイのジメジメとした湿気と真っ黒な排気ガスに嫌気がさして、海の町・ホアヒンに逃げるようにやってきた。
騒がしいバンコクを忘れさせてくれる、静かな波と穏やかな人々が印象的だった。
『X-E1』の空気感が好き
旅で使うカメラは決まってこれ。FUJIFILMの「X-E1」
当時乗っていたバイクを売り払い、10万円で買ったカメラ。
とくにスペックにこだわりがあるわけでもなかったので、一番デザインの惹かれたカメラにした。
もう6年近く使っている。
X-E1の素朴な「空気感」が好きだ。
いつもストラップを手に巻きつけて写真をとるから、もうこんなにボロボロ。
そろそろ新しい革のストラップを買おうかな。
それからiPhoneも大切なカメラの1つ。
ポケットからさっと取り出すことができて、手軽に撮ることができるiPhoneは、一番身近なカメラ。
最近はめっきり性能がいいから、誰かに送ったり、思い出として見返したりするには、十分すぎるほど綺麗な写真が撮れる。
さいごに
社会人になってから、もうすぐ5年が経つ。
学生時代は
「社会人になったらもう旅なんて、行けないんだろうなあ…。」
なんて漠然と思っていたが、全然行ける。社会人になってからは、ラオス・タイ・インド・モンゴルへ行った。
ただ学生の頃と違うのは、旅に理由づけをしてしまうことかもしれない。「誰かに語るため」「写真を見せるため」。少なからずそんなことを考えて旅をしてしまっている。
それもまたいいのかもしれない。
人生のフェーズにあった旅を楽しみたいと思うし、旅への接し方は少しづつ変わっていく。とにかくこれからもたくさん旅をしたい。
おわり。
ひつじ。
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