田んぼの畦道を歩きながら頭の中に湧き出す感情を、逃さない様に網ですくう。
それを手の中の小さな端末に書き連ねる。
耳の中にはアコースティックギターの柔らかで優しい音色。
時間の流れは滑らかで、ゆったりと田舎的。午後3時。冬。陽の光は弱い。
あの40日間の夏休み、初めて水の中を泳ぐメダカを捕まえたときの感動を今でもよく覚えてる。
毎日のように友人や弟と田んぼに出かけては、タガメ、タニシ、アメンボ、エビ、そこにいるあらゆる生き物を水槽の中に入れていった。
この場所は、あの時と何も変わらない。取り残された僕たちの影だけがいつまでそこにあるような気がした。
きっと変わって行くのは僕の細胞と記憶だけ。
遠くに流れる雲も、湿っぽい空も、白い太陽も、土のにおいも何一つ変わらない。
今日はPV数やページCTRなんてどうだっていい、ただ頭の中の感情を吐き出すだけでいい。
畦道を抜け家に向かうとさっきまでの懐古的な感情は夢から覚めたある朝のように跡形もなく霧散した。
暖かな部屋に戻ったら銀色のラップトップを開き、この感情を記事にしよう。
おわり。
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